病院のベッドに横たわり、白くなったマサルくんの手を握り、母親は後悔の念に苛まれていた。
「中学生にもなると手をつなぐこともなくなっていたので、『こんなに大きくなっていたんだな』と驚きました。同時に、夕方にマサルが部活の悩みを話してきたのを遮ったことが脳裏に浮かび『私が追い詰めてしまったのではないか』と自分を責める気持ちが止まりませんでした」
両親は夜中、病院から家へ戻ると、玄関にはマサルくんの靴がそのまま置かれ、隣に不自然に靴下があることに気がついた。そのとき、まだ警察の捜査が続いていた。防犯カメラにはマサルくんがマンションの共有スペースを歩き回った後に自ら転落したとみられる姿が残っていたため、警察は自殺と判断した。
自宅の部屋も捜索され、警察はマサルくんが小学校6年時に使っていたノートに目を止めた。ノートにはいくつもの小さな「死」を並べて書いた大きな「死」という文字や、10個以上の「呪」が書かれたページ、「絶望」「死」「亡」などの文字が乱雑に書かれたページがあった。
「マサルがいなくなって、最初は何も考えられずにずっと泣いていました。頭が真っ白になっていました。しかし警察の捜査が進む中で、小学校6年生の時にマサルに何かが起きていたことがわかり、それを調べなければいけないと思うようになりました」
このノートの存在をきっかけに、両親はマサルくんが小学校6年生の時に何が起きたのかを探り始めた。
葬儀の日に言われた「小6の時の担任Xのせいだと思う」
すると見えてきたのは、当時の担任・X教諭による体罰・不適切指導の数々だった。
マサルくんが亡くなった翌日に通夜、その翌日には葬儀が行われた。両親は憔悴していたが、参列した同級生の複数人から「小6の時の担任Xのせいだと思う」と話すのを聞いた。
「通夜や葬儀に来てくれたマサルの友達が『担任のせいだと思う』と言うんです。詳しく話を聞くと、私たちが知らないところでマサルがひどい目にあっていたことがわかってきました。当時どうして気づいてあげられなかったのかと後悔の念に襲われましたが、同時に学校やX先生に対して怒りが湧いてきました」

