中学校に入学した直後だった2019年4月18日に、自宅マンションから転落して亡くなったマサルくん(仮名)。
悲しみに沈む両親は、通夜や葬儀で「X先生のせいだと思う」という声を複数の同級生から聞いた。マサルくんの小学校6年生時代の担任であり、数々の問題を起こしてきたX教諭とは何者なのか――。
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マサルくんの母親がX教諭を知ったのは、マサルくんの3歳上の姉が小学校に通っている時だった。
「X先生は、マサルの姉が小5のときに赴任してきました。姉の担任ではなかったのですが、X先生のクラスでは先生が怖いと言って女の子が不登校になり、顧問をしていた器楽部では部を辞めた子もいました。娘も小6のときに『お前の顔を見るとイライラする』と言われたことがあり、学校に連絡したこともありました」
この件は、マサルくんの死亡に関する調査委員会の報告書にも認められている。
X教諭は他の児童に対しても運動会の練習などで強い口調で指導することがあり、児童が泣き出す、過呼吸になる、保健室登校が増えるなどの問題が起きていた。そのため、2016年度と2017年度はクラスの担任を外れていた。
「胸ぐらをつかまれて掃除用具入れに打ちつけられた」という証言も…
しかし2018年4月から、X教諭はマサルくんのクラス担任になった。X教諭が自ら希望したという。マサルくんの友人の1人は、「担任がXって嫌だね」と話していたところを聞かれてしまい、X教諭に胸ぐらをつかまれて掃除用具入れに打ちつけられたという。後に保護者が被害届を提出したが、X教諭が否定したこともあり、起訴猶予となっていた。
「掃除用具入れに打ち付けられた友達のお母さんとは面識もほとんどなかったのですが、事件から半年後の10月に『転校します』と挨拶がありました。『転校後もマサルくんと息子で遊べるように』と親同士で連絡先を交換してから、X先生の体罰や不適切指導の数々を聞くようになりました。長女の時にあったことを思い出して、あの頃から変わっていないんだなと思ったんです」
マサルくんの母親が同じ小学校に通う子どもの保護者たちから話を聞きはじめると、「X教諭から被害を受けた」という話が次々と集まってきた。そこで体罰や不適切な指導の調査や、再発防止を求めた嘆願書を作り、19年3月に小学校に提出した。
「保護者7人が個別に学校と話し合いをしました。体罰を受けた児童の保護者が『担任を替えてほしい』と主張したのですが、聞き入れてもらえませんでした。『人が足りない』という理由だったそうですが、とても信じられません」