X教諭の体罰や威圧的な指導はクラスの複数の生徒に向けられ、マサルくんもよく叱責される1人だった。
中学生になったマサルくんは亡くなる3日前の「生活ノート」に「これからは迷わくをかけないようがんばりたいです」と書き、担任から「怒られないようにではなく、褒められるようにしたいね」と諭されるなど、人に怒られることに過敏になっていたことが察せられる。
「マサルが小学生の頃は『指導死』という言葉も知りませんでしたし、教師の体罰や高圧的な指導で子どもがどれほど追い詰められるのか、そこまで深く考えたことはありませんでした……。ただマサルが自殺した理由を考えると、精神的負担が積み重なったからとしか思えないんです」
「マサルさんの変調にX教諭による不適切指導が強く関わっていたと想定される」
報告書では、「マサルさんの変調にX教諭による不適切指導が強く関わっていたと想定される。したがって、管理職がX教諭に対して適切な指導を行い、X教諭の言動が是正されていれば、マサルさんの抑うつ状態の発症や憎悪を防ぐことができた可能性があった」とされた。
「委員の児童精神科医の先生が丁寧に調査し明らかにしてくださり、息子に起こったことが報告書にそのまま書いてあるように感じました。息子の死とX教諭の不適切指導の関連性が認められてよかったと思いました。心の傷は見えないので軽視されがちですが、誰にでも起こり得ることだと思います」
マサルくんの母親は昨年から、教員の不適切指導問題に取り組む「安全な生徒指導を考える会」のメンバーに加わった。2024年から文部科学省は「不適切指導」で処分された教職員の数を公表するようになったが、実態はいまだにわからない部分が多い。そのため同会では、実態調査をしようとしている。
学校という閉ざされた空間の安全をどう確保するのか、問題解決のメドは立っていない。
