一方、民では、前例や規則、慣例に縛られない自由な発想と行動力が求められます。

経団連に身を置いた経験がいきた

【中村】いま振り返れば、長年、経団連に身を置いた経験が活きたのかなと思います。

例えば、私は、1990年代後半に会社法の改正にたずさわりました。それまでは法制審議会で学者を中心に議論に、議論を重ねて制度を変えてきた。

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しかしそれでは急速に変わるビジネスの現場に迅速に反映できない。

そこで、私は国会議員に働きかけて議員立法で法改正を実現していただきました。そうした改革は、一部の議員に根回ししただけではできません。

野党も含めて、たくさんの人たちに理解していただく必要がある。アクションを起こさなければ、状況は変わらなかった。

官と民の両方で培った経験が、2019年のローマ教皇訪日に、役立ったと感じるのです。(続く)

(初出日:2022年2月27日)

中村 芳夫(なかむら・よしお)
前駐バチカン大使
1942年東京都生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業後、同大学院経済学研究科修士課程修了。68年経団連に入局し税制を担当。米ジョージタウン大学にフルブライト奨学生として派遣され同大学院博士課程修了。92年、米国上院財政委員会で日本の税制について証言。2010年経団連副会長・事務総長に就任。14年第2次安倍内閣・内閣官房参与(産業政策)に。16年駐バチカン大使(~20年)。カトリック信徒。
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