医療ジャーナリストの長田昭二氏(59)は、前立腺がんで「余命半年」の宣告を受けながら執筆活動を続けている。今回はがんの進行と同時期に発生してきた「足の痛み」について綴った。
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息切れ、だるさを抜いて、「足の痛み」が頭角を現した
日々の症状でつらいのは、前回までは貧血による息切れとだるさがトップだったが、ここに来て「足の痛み」が俄然頭角を現してきた。
数カ月前から両方の太腿(前腿)と膝に痛みは感じていたのだが、これが突如として威力を増してきたのだ。
当初、主治医の小路医師は「がんがどこに転移しても不思議ではないので」と話していたが、左右の前腿と膝という限定した部位に、同じような強さの痛みが出るという点に不自然さを感じているようでもあった。
「もしかしたら腰椎が圧迫骨折して、中を通る神経を刺激しているのかもしれません」
これまでのホルモン治療で骨粗鬆症が進んでおり、ちょっとしたショックで圧迫骨折するリスクを抱えていることは以前から指摘されていた。尻もちをつかない、重いものは持たない、などのできる限りの対策は講じてきたつもりだが、それでも知らぬ間に圧迫骨折を起こしている危険性は捨てきれないし、「両方の足の同じ部位に同じような痛みが出る」という特徴的な症状についても、小路医師の推測なら納得がいく。
そこで同院整形外科からオーダーしてもらい、腰のエックス線写真を撮ってもらったところ、幸いにも腰椎の圧迫骨折は見られなかった。となると原因は何なのか。
整形外科医の推測はこうだ。
「がんとは関係なく、年齢的な問題で腰部脊柱管狭窄症が起きているのではないか」
脊柱管狭窄症とは、脊椎の骨や靭帯などが変形して中を通る神経を刺激している病態。60歳も近くなると、普通に起きても不思議ではないという。
それをはっきりさせるためにMRI検査を受けた。連休明けに結果が出る予定だが、もしこれが脊柱管狭窄症だとしたら腹立たしい話じゃないか。
こっちががんの末期症状の対応でてんてこ舞いの忙しさだというときに、がんとは関係ない痛みを引き起こして意識をそちらに向けさせる。“かまってちゃん”にもほどがあるというものだ。
これは無視したいのだが、無視できない痛みになってきた。
歩く速度はイモムシレベルにまで低下し、それでもふらついたりするので、ついに「杖」を購入してしまった。
杖をついたからと言って元のスピードですたすた歩けるわけではないが、2本足よりは3本足のほうが少しは安定するというもの。
また杖を持っていれば電車の優先席に座っていても白い目で見られるリスクは下がるような気がする。