医療ジャーナリストの長田昭二氏(59)は、前立腺がんで「余命半年」の宣告を受けながら執筆活動を続けている。今回は、「最後の場所」をどこにするかという選択を中心に綴った。

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「骨転移の進行が危惧されます」

 3月19日、月に一度の化学療法を受けに東海大学医学部付属病院に行った。

 前立腺がんの腫瘍マーカー「PSA」の数値は前回の21.40に対して23.90と微増だったが、体内で炎症が生じていることを示す「CRP」の値が「5.31」と高値でが続いており(前回は5.80、基準値は0.00~0.14)、主治医で同大医学部腎泌尿器科学領域主任教授の小路直医師は、

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「骨転移の進行が危惧されます」

 と指摘する。

 余命半年の宣告から5カ月が過ぎたのだから、そうしたことも起きるだろう。

 いろいろと覚悟をしなければならない。

主治医の小路医師 ©文藝春秋

 じつはその1週間前にも、僕は病院を訪れている。

 強烈なだるさに音を上げて、輸血をしてもらいに行ったのだ。

 その日のヘモグロビンの値は9.1と、自己ワーストに近い数値だった。

 200ccの血液を入れてもらってラクになったのだが、小路医師は、

「今後は輸血の頻度も高まることが予想されます」

 という。

伊勢原に通う回数を減らす策はないか?

 輸血を受ける時のこちらの体調はきわめて悪い。

 できることならベッドから起き上がりたくないほどの強いだるさに支配されているのだが、輸血してもらわないと改善しないので、仕方なく最後の力を振り絞って起き上がり、洋服に着替えて電車に乗って病院に行く。

 しかし、僕の場合は、自宅のある東京都新宿区から病院のある神奈川県伊勢原市まで、なんだかんだで2時間弱の時間を要する。

 これはじつにつらい。

 元気なときなら何ということもなかったのだが、だるさに見舞われるようになってからは、この通院がとてつもなくつらく感じられるようになってきたのだ。

 そこで小路医師に相談した。

「今後、化学療法は大学病院で受けるとしても、それ以外の治療や処置は自宅近くの施設で受けられないものでしょうか」

 小路医師もそのことについては理解を示してくれて、

「緩和ケア科の先生と相談して、最善の策を講じましょう」

 と答えてくれた。

 その足で緩和ケア科に立ち寄り、同科教授の徳原真医師に相談する。

 前回も書いたが徳原医師は新宿区内の病院に長く勤務していた経験があり、僕の自宅近辺の医療事情に明るい。

 四谷の僕のかかりつけ医と話をして、何らかの措置、つまり「伊勢原に通う回数を減らす策」を考えてくれるという。

 いまは腎泌尿器科の他に不定期ながら形成外科、口腔外科、整形外科、放射線科など診療科を受診するために東海大学病院に行くことがあり、平均すると「月3回」程度は伊勢原に通っている。

 これをせめて「月2回」、できれば「月1回」にまとめられるとありがたい。

 今後の展開に大いに期待したい。