医療ジャーナリストの長田昭二氏(59)は、前立腺がんで「余命半年」の宣告を受けながら執筆活動を続けている。主治医が勧める新たな治療について、長田氏が下した決断とは。

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腫瘍マーカーは微増で済んだ

 2月18日(水)、化学療法を受ける日なので、東海大学医学部付属病院を受診した。今回は初めて、従妹に一緒に行ってもらった。

 本当は従妹の母親である僕の叔母さん(心配性)も病院に来ていたのだが、主治医である小路直医師(同大腎泌尿器科学領域主任教授)の説明を聞いて泣かれたり、取り乱したりされても困るので、詳しいことは娘から聞いてもらうことにして、病院併設のスタバで待ってもらっていた。

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 従妹を伴って診察室に入る。小路医師に従妹を紹介し、今朝受けた血液検査の結果を聞く。

筆者の主治医、東海大学医学部付属病院の小路医師 ©文藝春秋

 前立腺がんの腫瘍マーカー「PSA」は21.40で、前回の21.20からは0.20の微増。ザイティガを休薬したにしては上昇の度合いは小さく済んだ。

 ただ、体内のどこかで炎症が起きていることを示す「CRP」の値が前回の2.62から5.80へと倍増している。これはアデノウイルスなどへの感染でも高まることがあるようで、1週間前の発熱が何らかの関与をしているのではないか――とは医療ジャーナリストのO氏の推察だが、小路医師は、がんが転移した骨での炎症が強くなっている可能性を指摘する。そうなると、これまで以上に転倒や尻もちなどに注意をする必要が出て来る。

 万一背中を強打して脊椎が圧迫骨折したら、そのまま寝たきりに移行するリスクが高まる。一度寝たきりになったら改善の可能性はきわめて低く、余命は一気に短くなるというのだ。

 今後はいかにして病気の進行を抑えるか、ということになってくるのだが、小路医師は以前にも話していたラジウム223という治療を推奨する。ラジウム223という元素を静脈に注射すると、転移した骨の近くに集まり、そこからα線(放射線)が放射されて転移がんがダメージを受ける、という治療だ。

 これをやればほぼ確実にPSAを下げられるとのことだが、副作用として「だるさ」がほぼ必発だともいう。いまあるだるさで手一杯のところに、さらにだるさを上乗せされたら、とてもじゃないが仕事にならなくなってしまう。