想定では1日5000人は利用するはずだったが…

 想定では開業直後は1日5000人、将来は1万2000人のお客が乗るはずだった。ところが、初年度は1日3300人、その後は2000人程度で推移する。そもそもニュータウンが5万人規模から4万人規模に変更され、現実には3万人足らずだったことが目算違い。

 

 さらに高速道路網の充実もあって、小牧が内陸工業地帯となり、名古屋市に通勤する人も思ったより少なくなった。

末期、ニュータウン住民の利用率は「6%ほど」

 そこにどうせ鉄道に乗るなら名古屋の中心部に出やすい中央線となって、春日井駅や高蔵寺駅へのバスが優勢に。当時、名鉄小牧線は終点の上飯田駅から10分ほど歩かなければ地下鉄に乗り継げなかった。

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 そうした不便さも少なからず影響したのだろう。ピーチライナー、末期にはニュータウン住民の6%ほどしか利用していなかったという。それではいくらなんでも、である。

 こうしてピーチライナーはわずか16年で歴史に幕を下ろした。平成不況の真っ只中という時代背景でなければ、もしかしたら違う結末もあったかもしれない。バブルか、はたまたそれ以前か。ただ、いまさらそんなことを言っても意味がない。ピーチライナーの高架や駅などの施設は、着々と撤去が進んでいる。

写真=鼠入昌史

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