世界的巨大ターミナルから1日に数人しか使わないような小駅まで、日本には9000もの駅があるという。
そうした様々な終着駅を歩き続けた鼠入昌史氏の著書『ナゾの終着駅』より、一部を抜粋して掲載する。
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東海道新幹線といったら、やっぱり「のぞみ」。看板列車だとかなんだとか、御託を並べるまでもなく、東海道新幹線=「のぞみ」。これは現代日本人の共通認識といっていい。
何しろ、1時間に最大で12本の「のぞみ」が東京~新大阪間を走っているのだ。けれど東海道新幹線の駅は、「のぞみ」が停まる東京・品川・新横浜・名古屋・京都・新大阪だけではない。「ひかり」や「こだま」だけが停まる新幹線の駅。それがいくつもあってこそ、大動脈の役割は完結する。
そうした小さな、だけど忘れてはならない駅のひとつが、三河安城駅だ。三河安城駅と聞けば、ピンとくる人も多いだろう。
「のぞみ」が名古屋駅に近づいてくると流れる車内放送─「この電車は三河安城駅を定刻通りに通過しました。次の名古屋駅にはおよそ9分で到着します……」というアレだ。
名古屋で降りるときはこの車内放送を聞いて、「ああ、そろそろだな」とリクライニングをもとに戻して荷物をまとめて降りる準備をする。だから三河安城駅は「のぞみ」ユーザーからの知名度がかなり高い。
ところが、実際に降りたことがある人はどれだけいるだろうか。まさしく三河安城駅は、天下の東海道新幹線における“ナゾの通過駅”の横綱といっていい。