新幹線の三河安城駅は高架駅である。新幹線のほとんどの駅は高架だからこれは別にナゾでもなんでもない。

三河安城駅、新幹線改札のまえ

 高架下の改札から北口に出ると、大きなロータリーと公園らしきものが広がり、そのさらに先にはもうひとつ小さな駅舎があった。こちらは在来線・東海道本線の三河安城駅。

在来線の駅舎のまえから、新幹線駅をのぞむ。間にはロータリーと公園がある

 つまり、新幹線と在来線の三河安城駅は、ロータリーと公園を挟んで向かい合っているというわけだ。

ADVERTISEMENT

 で、その2つの駅舎は公園の間を抜けて移動してもいいが、直接つながっている通路を利用することもできる。この通路の中はなんだか昭和っぽい雰囲気が漂っている。

新幹線駅と在来線駅を結ぶ連絡通路
 

 方向を示す案内板も国鉄時代のそれだ。三河安城駅が開業したのは1988年3月13日。国鉄からJRに移って約1年後のことで、開業当時の雰囲気を今も残しているのだろう。

妙におしゃれな「2つの三河安城駅」のナゾ

新幹線駅は屋根の上の時計台がトレードマークだ
こちらが在来線の三河安城駅。どことなく神殿風で大階段を登るようにして入り口に向かう

 いずれにせよ、向かい合った2つの三河安城駅。もちろん新幹線の方が規模は大きく、屋根の上に時計塔まで設えられている。コンコースの入り口はアーチ状のおしゃれな駅だ。

 在来線側も小さいながらどことなく神殿風というか、大階段を登るようにして入り口に向かう。その階段の下には小さな円形のステージのようなものがある。とにかく、全体的におしゃれな雰囲気なのだ。

 いったいどうしてこんなデザインなのか。そのヒントが、在来線の駅に向かう階段の横にあった。「デンパーク」という公園の案内看板である。

 もちろんこの「デンパーク」とはデンマークに引っかけた名称。新幹線「のぞみ」でよく触れる(けど降りはしない)愛知の片隅に、なぜ北欧情緒あふれる名前が……。「2つ三河安城のナゾ」は後編に続く(写真=鼠入昌史)。

◆◆◆

「文春オンライン」スタートから続く人気鉄道・紀行連載がいよいよ書籍化!

 250駅以上訪ねてきた著者の「いま絶対に読みたい30駅」には何がある? 名前はよく聞くけれど、降りたことはない通勤電車の終着駅。どの駅も小1時間ほど歩いていれば、「埋もれていた日本の150年」がそれぞれの角度で見えてくる——。

 定期代+数百円の小旅行が詰まった、“つい乗り過ごしたくなる”1冊。

ナゾの終着駅 (文春新書)

鼠入 昌史
文藝春秋
2025年3月19日 発売