国家から「反社会的組織」と定義されている暴力団。その構成員や準構成員の家族、とりわけ子どもはどのような人生を過ごし、大人になっていくのか。『ヤクザの子』(石井 光太著、新潮社)から一部抜粋してお届けする。なお、登場する証言者やその関係者は、身に危険が及ぶことを考慮して全て仮名にしている。(全3回の2回目/前回を読む/続きを読む)
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家では借金取りと夫婦喧嘩に翻弄され、学校ではいじめに遭う。そんな彼女が、朝から晩まで街を行くあてもなく徘徊するようになったのは必然だった。だが、小学生の女の子が無防備で野外にいれば、悪い大人に目を付けられることもある。そのせいで、彼女は10歳までに二度にわたって性犯罪に巻き込まれた。最初は、道を歩いていた時、見ず知らずの男が近寄って来て、親しげに言った。
「僕は、この近くの学校で先生をしているんだ。今、あるお家を捜している。この辺に詳しくないから一緒に来て道を教えてくれないかな」
晴子は先生と聞いて信用し、後をついて行ったところ、ひっそりとしたアパートの階段の陰に連れて行かれた。男は晴子の肩をつかみ、「ちょっと脱ごうね」と言って無理やり下着を脱がした。男は恐怖で動けなくなっている晴子の股間に顔をうずめた。
途中、人が近づいて来る音がしたので、男は慌てて晴子の手を引いて、アパートの裏側へと連れて行った。怯え切っている晴子の頭には助けを求めるという考えが浮かばなかった。男はそれをいいことに、アパートの裏で好きなだけ彼女の体を弄んだそうだ。