「伊藤に睨まれたら先はない」
そうした中で、今年こそ長官就任が有力視されているのが伊藤である。旧大蔵省では新人有望株の配属先とされる文書課からキャリアをスタートさせ、金融庁の前身である金融監督庁にも籍を置いた一方、財務省では主計、主税両局と大臣官房を行き来したオールラウンドプレイヤーだ。政策金融課企画官だった2007年には官民人材交流の第一弾として、東京証券取引所の経営企画部企画統括役(部長級)を経験。課長ポストでは消費税などを扱う税制二課を担当した。
霞が関に伊藤の名が知れ渡ったのは2015年からの秘書課長時代のことである。2018年3月に発覚した森友学園を巡る公文書改ざん問題で対応を一手に取り仕切り、その翌月に起こった福田淳一財務次官(昭和57年、旧大蔵省)のセクハラ問題では記者会見を担当。マスコミからの厳しい追及の矢面にも立たされた。前代未聞の不祥事に揺れる中、秘書課長在任は異例の4年間に。省内では、「伊藤に睨まれたら先はない」(中堅幹部)と畏怖に近い念さえ抱かれることとなった。(文中敬称略)
※本記事の全文(約5500文字)は、月刊文藝春秋のウェブメディア「文藝春秋PLUS」に掲載されています(青山次郎「金融庁長官人事はイトウ同士の争い 波乱の要素はトランプ関税と、あの事件の余波か」)。全文では、「大物長官」として知られた森信親氏の意向、長官レースの「対抗馬」とされる油布志行氏のキャリアなどについても詳細に語られています。
