今夏の金融庁長官人事はどうなるのか。考えられる本命と対抗馬はーー。月刊文藝春秋のウェブメディア「文藝春秋PLUS」のオリジナル記事から一部紹介します。
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「サプライズ」だった前回の金融庁長官人事
今年こそ、「イトウ長官」の誕生なるか――。米大統領のドナルド・トランプによる相互関税を受け、世界の金融市場が大混乱を続けているだけに、注目が集まっているのが、今夏の金融庁長官人事である。
株価が大きく下落する中、4月下旬には、前首相の岸田文雄が自ら立ち上げた「資産運用立国議連」の面々を従えて、首相の石破茂を訪問。少額投資非課税制度(NISA)を未成年や高齢者向けに拡充することなどを訴えた。
「金融庁は今年7月で発足からちょうど25年を迎えます。岸田議連が訴えている制度案も同庁幹部が全面サポート。『貯蓄から投資へ』の流れが浸透する中で、金融庁が果たす役割の重要性は高まっています」(金融庁中堅)
昨夏の人事で金融庁長官の座を射止めたのは、企画市場局長の井藤英樹(昭和63年、旧大蔵省入省)だった。だが、かねて長官の大本命とされていたのは、2022年から監督局長を務める伊藤豊(平成元年、同)のはず。下馬評ではほとんど名前の挙がらなかった井藤に対し、金融業界からは「イトウ違いではないのか!?」と驚きの声さえ上がるサプライズ人事だった。
井藤は総合政策局在籍時に「貯蓄から投資へ」の浸透に尽力し、「新NISAの仕掛け人」と呼ばれた。そこを当時の岸田首相に見込まれて長官就任となったとされるが、もともとあっさりとした性格。庁内外では今夏の長官交代は、ほぼ既定路線だろうと囁かれている。