〈さすがノンフィクション作家ですね。金の話を最後に聞いて来るとは! 一番核心の部分じゃないですか〉(4月22日付、カミンスカス操から18通目の手紙)

 ノンフィクション作家の森功氏は、積水ハウス事件の「主犯格」で、現在服役中のカミンスカス操(旧姓小山、懲役11年の実刑判決)から届いた、17通に及ぶ手紙をもとに事件の真相に迫っている(「文藝春秋」短期集中連載「地面師 獄中からの告発」4月号~6月号)。

カミンスカス受刑者

55億円はいまだに行方不明

 地面師たちが積水ハウスから騙し取った55億円はいまだに行方不明で、裁判でも明らかになっていない。カミンスカスを含めて起訴された地面師10名の刑が確定したものの、彼らがどこかに隠し持っている可能性は残されているわけだ。

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 そのカネの流れについて森氏がカミンスカスに手紙で問うたところ、連載の後編「騙し取った55億円の行方」を校了した直後の4月28日、カミンスカスから新たに18通目の手紙が届いた。

新たに届いた手紙

 カミンスカスは一貫して、〈私が受け取ったお金は(中略)紹介料の半金の1億円だけです〉と主張してきた。2017年4月に五反田の旅館「海喜館(うみきかん)」を積水ハウスに売る仮契約を結んだ際、紹介手数料は2億円の約束だったが、実際は半分の1億円しか受け取っていないという。

舞台となった「海喜館」 ©時事通信社

〈1億円だけ〉とする主張は本当なのか?

 だがその一方で、カミンスカスは仮契約から3カ月後の2017年7月から8月にかけて、有明と浅草のタワマンを1室ずつ購入。この2部屋の代金だけで1億円を優に超えている。果たして受け取ったのは〈1億円だけ〉とする主張は本当なのか。

 マンション購入の原資について、カミンスカスは18通目の手紙でこう説明した。

〈私は不動産売買の種銭は、結構金主から引っ張って来ます。2億ぐらいの金主(マンションの様な担保が有る場合)は5人ほどいます。(中略)今回は1億5000万円出してもらって約2ヶ月で1500万円を付けて返金しました〉