積水ハウスが地面師に騙された事件(2017年6月発生。被害額55億円)は、豊川悦司が「ハリソン山中」役で主演したNetflix配信のドラマ「地面師たち」のモチーフとなったことで知られる。実際の事件ではカミンスカス操(服役中)が「主犯格」と報じられたが、その本人が〈私は無罪です〉とノンフィクション作家の森功氏に手紙で訴えていることがわかった。

カミンスカス受刑者

森氏が興味を惹かれた〈事件構図〉

 1通目の手紙(2024年4月25日消印)は、こう始まっていた。

〈前略 森功殿
 私はセキスイ地面師事件で主犯格にされたカミンスカスです〉

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 カミンスカスの旧姓は小山だが、リトアニア人女性と結婚して妻の姓に変えた。手紙を送ってきたのは、事件摘発直後に森氏が『地面師 他人の土地を売り飛ばす闇の詐欺集団』(講談社)を出版したからだと思われる。逮捕された地面師が無罪を訴えるのはよくあることだが、手紙に書かれていた〈事件構図〉の内容に森氏は興味を惹かれてカミンスカスに返信をした。その後、彼からの手紙は13通に及んだ。

昨年4月に刑務所から発送された ©文藝春秋

 その〈事件構図〉には、「地面師グループ」と地主役を演じた「羽毛田」の間に、「エマイユ横澤」(仮名)なる人物が位置づけられていた。横澤についてカミンスカスは手紙でこう説明する。

〈私はエマイユの横澤が物件の元付けという事で会って交渉し55億円で売買する事を承諾してもらい六本木で祝杯をあげました〉