ノンフィクション作家の高橋幸春氏の取材によると、中国では、亡くなった人だけではなく、死刑囚からも臓器提供・移植が行われていた時代があったという。

 いったいなぜ、そして、どのようにして臓器を確保するのだろうか。ここでは、高橋氏の著書『臓器ブローカー すがる患者をむさぼり喰う業者たち』の一部を抜粋し、日本と中国の間にある臓器移植問題の実情を紹介する。(全3回の2回目/続きを読む)

写真はイメージです ©Gengorouイメージマート

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謝礼二千数百万円が関係各方面に飛び交う

 1990年代の中国の移植医療は、臨床経験を積み重ねる段階で、こうした強引な方法を繰り返しながら進歩を遂げてきた。中国の移植医療レベルは、アメリカや日本とほぼ同じ水準を維持していると思われる。

 そして、今も中国で移植を受ける患者、受けたいと望む日本人患者は少なくない。中国でなら渡航から帰国まで2カ月から3カ月で移植が可能なのだ。

 つまり、レシピエントに適合するドナー臓器が、それだけの期間で現れる、ということだ。

 2007年以降、難病患者支援の会からは、毎月、定期的にレシピエントが中国に送られ、腎臓移植手術を受けていた。

「中国側の病院とも信頼関係が築かれています」

 菊池は悪びれることなく私の取材に答えていた。

 ドナーに関しての情報が書面で説明されることはない。しかし、死刑囚からの臓器移植の場合、臓器提供の知らせは午前中にレシピエント側に伝えられるのが一般的らしい。

〈北京からきた臓器〉

 これが死刑囚から提供された臓器を指す、関係者間で通用する隠語だ。

 中国での腎臓移植費用はおよそ二千数百万円。そして、この移植費用は毎年数百万円単位で上がっていった。