「日本政府のみなさんは恥ずかしくないのですか」

 同19条の(a)項には、こう明記されている。

〈障害者が、他の者との平等を基礎として、居住地を選択し、及びどこで誰と生活するかを選択する機会を有すること並びに特定の生活施設で生活する義務を負わないこと〉

 たとえば、日本の精神科病院の入院者数。2022年現在、その数は約29万人と世界でも突出して多い。平均在院日数も277日と、OECD加盟国(38カ国中27カ国)の32日と比べて異様な数字である。

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 藤井克徳さん(編集部注:日本障害者協議会代表)が代表を務める日本障害者協議会が2022年8月に公表した調査でも、OECD加盟国(38カ国中36カ国)のなかで、実に37パーセントもの精神科病床が日本に集中していることがわかった(推定精神科病床数32万4195。人口1000人当たりの精神科病床数2.57)。

 一方、入所施設で暮らす障害者の地域移行も、遅々として進まない。

 前述のように、2019年にグループホーム入居者数が入所施設の入所者数を12万人台後半で辛うじて上回ったものの、それ以降は動きの鈍化が始まり、入所施設の入所者数は2022年現在、横ばい状態の約12万7000人。しかも、障害者権利条約批准後に起こった津久井やまゆり園事件を始めとする陰惨な虐待事件の数々。施設の内外でいくら花見を楽しもうと、同権利委員会の心証が好転する要素は何もなかった。

 同権利委員会のキム・ミヨン副議長は、同審査会の締めくくりの挨拶で「パラレルレポートが示す実情と政府報告書に大きなギャップが見られる」と述べたが、途中から涙声に変わり、日本政府にこんな言葉を投げつけた。

「こんなにも真剣なパラレルレポート、そして日本からの大勢の傍聴者の前で、日本政府のみなさんは恥ずかしくないのですか」

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