「被害者に殺意を抱いたことは一言では説明できないが、一生懸命愛情を注いでいるのに、前カレに会ったりして、裏切られた怒り、前カレへの嫉妬、それが怒りや憎しみに変わり、殺意に発展した。
マンションで前カレとの会話を聞いたときは絶対許せなかったし、殺してやると思った。お腹の子のことを考える余裕はまったくなかった。その日の午後に殺害計画を考え、外に持って出そうなものは持ち出そうと考えた。最初は携帯しか思いつかなかったが、家出に見せかけるためにすべてを持ち出そうと思った。財布には5000円札が1枚と1000円札が4枚入っていた。窃盗の意図はなかった。いつまでも自分が持っていてはおかしいので、いずれ捨てるつもりだった」
井上は犯行の経緯を公判でも冗舌にしゃべったが、空気が一変したのは、友美さんの父親が遺族の意見陳述をしたときだった。
裁判で「極刑にしてください」と語った父親
「友美が亡くなって5カ月経ちました。今でもベビー用品売り場でほほ笑んでいる姿が目に浮かびます。井上のことはトラック運転手と聞いていましたが、夜間の運転は危ないので、保険料を支払ってあげました。友美と暮らすための新居のお金も出してあげました。それなのに本人は借金まみれで、税金も滞納している。出産費用を出すなんてとても無理。生活能力もないのに、前カレから奪うために、友美を妊娠させたのです。
友美が前カレと電話やメールをしていたことについては厳しく叱責し、井上にも『君も携帯なんか見るな』と注意しました。それでも前カレの会社に恫喝の電話をかけたり、前カレのトラックのキーを抜いたりするという異常行動に出たので、それをたしなめると『それがどうした? いかんの?』と開き直られた。離婚届については家内に叱ってもらうことを期待して電話をかけてきましたが、逆に『アンタはまたこんなものを書いて…』と説教され、友美にも『カズくんはこういうことをするからイヤになる』と言われていました。
離婚届は私が預かり、市役所に提出することも報告していたのに、なぜ殺害する気持ちになったのかまったく理解できない。死人に口なしで、言いたい放題言っている。まだ遺体が見つかっていなかった頃、『メアドを変えたので登録してください』という連絡があり、井上と連携して友美を探していた。友美の高校時代の彼氏の会社を突き止めたと言うので、私と家内と井上の3人で探しに行ったこともあった。井上の隠蔽工作は巧妙で、すっかり信じ込んでしまった。警察にも『井上が犯人とは思えない』と言ってしまったほどです。
罪を償うということは、刑務所に行くことではありません。人の命を奪った者は死をもって償うということです。友美の人生を奪い、私たちを3週間騙していたことは許せない。極刑にしてください」