母さんは、そんなことを言われたらしい。
学校から電話が来てることは分かったけど、俺は詳しく何を言われたのかまでは知らなかった。日頃の授業態度を注意されたんだろうな、くらいにしか思ってなかったんだ。そりゃ、自分が真面目な生徒ではない自覚くらいはあったからね。
母さんも検査がどうこうとか、そんなことまでは俺に言ってこなかった記憶がある。
しばらくして、今度は母さんと一緒に直接学校に呼び出された。
嫌な予感はしていた。学校から親同伴で呼び出されて、「ハルキくんは良い子ですね」なんて褒められるワケないんだから。どうせ長い説教を聞かされるハメになるんだと、うんざりしていた。
「ハルキくん、なんで呼ばれたか分かる?」
用意された教室に行くと、先生からそう聞かれた。
向こうには先生の他に、いつもの学校では見かけない大人も交ざっていた。何か様子がおかしい。これは普通に怒られる場面じゃないぞ、と気付いた。
学校側の要望は簡単で、とにかく俺に検査を受けてほしいという話だった。言葉を選んでいるのか、やたら回りくどく説明されたけど、要するに俺が「障がいを持ってるかどうか?」の検査だ。向こうに混ざっていた知らない大人は、その検査センターのスタッフらしかった。
「一応、検査を受けてもらうだけだから。大丈夫だと思うけど念のため」
……みたいなテンションでひたすら説得された。俺と母さんは混乱しつつ、渋々検査を受けることを約束した。
運命の検査
これは俺の人生を左右する検査だ。
本能的にそう思った。
病院みたいなワケのわからない施設に連れて行かれて、俺の「障がい者テスト」が始まった。向こうには、3人くらい大人がいたかな。母さんは、外の待合室で不安そうに待機していた。
せっかく友だちができたのに。
楽しい中学校生活になりそうだったのに。
やっとつかんだ幸せを、こいつらに潰されると思った。こいつらは悪魔だと思った。
「ここに、絵を描いてみて。ハルキくんが思う、お家の絵」