「マジでやばいくらい怖い人だった」男と同居することに

 彼女は父親の実家から一恵と次女を引き取り、逮捕前から付き合っていた男のマンションに転がり込んだ。

 男は谷口守という名前で、美奈子より16歳年上の50歳だった。暴力団構成員だったかどうかは不明だが、頭の回転の速さと法律の知識を武器に、裏社会の人間から寄せられる相談を解決して手数料をもらう仕事をしていた。

 たとえば、風俗店で働く女性から、給料の未払いについて相談を受けたとする。守はその店に押しかけて事実を問いただして責任を認めさせた上で、他の従業員からも未払いの相談を受けているとか、今後は自分にもみかじめ料を払えなどと口実を付けて多額の金を奪い取るのだ。店側も弱みを握られているので、警察沙汰にできない。

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 また、保険会社の悪徳社員と組み、多重債務者やホームレスといった人を脅して、意図的に事故を引き起こすこともあった。あらかじめ保険をかけておいて多額の金をだまし取り、悪徳社員と山分けするのだ。このようにあらゆる手口で金をむしり取るのだが、あまりに容赦なく相手を追いつめるため、自ら命を絶った人もいたという。

 一恵は言う。

「守さんから私が何かされたことはなかったけど、マジでやばいくらい怖い人だった。ほんのちょっとしたことであっても、相手を限界まで追い込まなければ気が済まないの。

 覚えているのは中学時代のこと。私、友達と一緒に遊んでて、学校の窓ガラスを割っちゃって、先生に親が呼び出されたの。そしたら、守さんが学校にやって来て、先生に対して『生徒がガラスを割ったのは、先生がきちんとコントロールできてないからだろ』とかなんとか言いがかりをつけて、先生たちに頭を下げさせた。これ、ビジネスだったら、指を5本落としておとしまえをつけろとか、何千万円支払えみたいなことを言っていたと思う。そういう人だった」