課長「例えば伊丹駅については、事故の2年前の暮れのダイヤ改正に当たって、現地調査をしたところ、『停車時分』は設定の15秒より長くかかり、平均で17秒から18秒かかっていることがわかったのですが、その程度なら駅員が整列乗車をさせたり『基準運転時分』に含まれる『ゆとり』の時分で補ったりすれば、ダイヤの遅れを生じさせないで済むと判断して、15秒の設定のままにしました」
宝塚駅~尼崎駅間で「余裕時分」が設定されていなかった
こうした説明は、木下には辻褄を合わせているに過ぎないとしか思えなかったので、発言の口調は厳しくなった。
「『停車時分』が実際には17秒から18秒かかっているのに、ダイヤに設定されている15秒という短い秒数を変えようとしないで、整列乗車や『ゆとり』の時分でやりくりしようというのは、いかにも姑息なやり方じゃないですか。
事故を起こした電車が宝塚駅から伊丹駅に向かってどう走っていたかについては、説明でわかった。しかし、わからないことがある。
ダイヤを作るに当たっては、無理なものにならないように、『基準運転時分』の中に『ゆとり』の時分を何秒か含ませるだけでなく、停車駅での乗客の乗り降りに予想以上の時間がかかるとか、線路工事などの影響で徐行を余儀なくされるといった場合に備えて、別枠で『余裕時分』というものを設定することになっていると、はじめに説明しましたよね。
だけど、宝塚駅~尼崎駅間の快速電車のダイヤについて、配布された資料を見ると、その区間には、『余裕時分』が設定されてないじゃないですか。一体、『余裕時分』を設定してある区間とない区間とは、どういう理由で分けてるんですか」
課長「『余裕時分』というのは、一定の区間で遅れが生じた場合でも、終着駅にはダイヤの時刻通りに着くようにするために、終着駅の1つ手前の停車駅の発車時刻やその後の走行時分の中に含ませる形で設定するようにしているのですが、宝塚駅~尼崎駅間の上り快速電車については、尼崎駅の手前の駅からの『余裕時分』を設けていませんでした」
