おせんには「はらはら」しています

――「道楽本屋」もそうですが、おせんが本にかける気持ちの強さは、本好きなら身に覚えがあり、グッとくること間違いなしだと思います。「おせん」というキャラクターを書くにあたって気を付けていることや、高瀬さんが思うおせん像で重視していることはなんでしょう?

高瀬 おせんは気が強く、べらんめえ口調で、下手をすると嫌われるキャラクターになってしまいそうで、生みの親としてははらはらしています。意外と恋愛物語が好きで、情にもろく、せっかちおせっかいゆえに、厄介な事件に首を突っ込みがちです。私情と世の道理を天秤にかけたとき、俯瞰して物事を見られる目をもつ女性であればと思います。そして物語の中とはいえ、おせんが大きな怪我や病気にならなければ、と。まるで子どもを見る親の気持ちです。

写真:原田達夫

――本書に欠かせないのがおせんの幼馴染・登の存在。つかず離れず、いい感じかと思いきやそうでもない(笑)青菜売りの青年ですが、今後の作品の中で、登との展開はもう決めていらっしゃいますか?

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高瀬 まったく、どうするか決めていません。せんと登がどうなるかは、登の押しの強さよりも、彼が引いたときに何か起こるかもしれません。恋のライバルでも出せば盛り上がるかもしれませんが、それはなんだかおもしろくない気もしますし、どうせくっつくんでしょ、と先を読まれるのもしゃくなので、あえて「おせん次第」ということにしておきます。

――今後も続いていく「事件を呼ぶ本の虫・おせん」の物語に、ぜひご注目ください!

往来絵巻 貸本屋おせん

高瀬 乃一

文藝春秋

2025年5月14日 発売

貸本屋おせん (文春文庫 た 116-1)

高瀬 乃一

文藝春秋

2025年5月8日 発売

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