――かつての『週刊少年マガジン』の表紙のような雰囲気で。
紗世 まさにそうです。太陽の下で撮影されるような、健康的で爽やかな王道グラビアに憧れていました。
でも、私の雰囲気だといただくお仕事はどこか哀愁の漂うようなものが多くて。イメージ撮影でも、旅館の一室から出られない、というようなことがよくありました(笑)。
――紗世さんのイメージだと、和風なしっとり系の仕事が多かったと。
紗世 そうですね。ただ、作品を重ねるうちに、少しずつ客観的に自分のイメージを捉えられるようになってきて、気づいてくるんです。
「爽やかさ」というのは、私の持っている雰囲気とは対照的で、自分にはあまり似合わないのだな、と。
ちょうどその頃、年齢的にも30代が近づいてきていて。自分自身としても「30代でグラビアを続けていく」というイメージがなかなか持てずにいました。
彼氏からは「どうしてこんなことしてるの?」と
――「30代でグラビアをしているイメージが持てなかった」ということですが、日本では若い女性だけがグラビアに出ているから?
紗世 それもありますし、そもそも私自身、何も知らないままこの業界に飛び込んでしまったんですね。
そのなかで徐々に気づいたのは、自分では誇りをもって取り組んでいることでも、周囲からは「えっ、グラビアをやってるの?」と、どこかネガティブに受け止められてしまうことが多かったという現実でした。
そんなこともあって、「30歳を迎えてまで続けるのは違うかもしれない」と思うようになっていました。
――そもそも彼氏を驚かせるためにグラビアを始めたということでしたが、近しい人からの反応も良くなかった?
紗世 はい。好きだった人の何気ない一言がきっかけで始めたお仕事だったのですが、初めて自分の作品が出たときに「どうしてこんなことしてるの?」と言われてしまって。
家族からも「やめてほしい」と、何度も言われました。
並行して他のお仕事もしていたのですが、お仕事をご一緒していた方々から、「芸能の経歴は伏せてほしい」とか、「今後、グラビアの媒体に出るのであれば、一緒にお仕事はできない」と言われたことも、一度や二度ではありませんでした。
――彼自身はグラビア好きだったのに、彼女が出るとなるとまた違うと。
紗世 「そんなことして、家族にはどう説明するつもりなの?」と、真剣に悲しそうな顔で諭されました。
それでも、イメージを表現することは、やはり自分にとって自然で、しっくりくるものでした。
だからこそ、最後に本当にやりたかったこと――これまでやりたくてもできなかった表現を、すべてやりきって一区切りにしようと決めたんです。
そして、自分なりに納得のいくかたちで表現した写真をInstagramに投稿したところ、思いがけず海外からお声がけをいただくことになりました。
写真=三宅史郎/文藝春秋
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