「雪かき不要」で、住民の満足度が高い一方…

 中古価格を調べてみた。意外なことに売却希望住戸は少ない。70㎡住戸の中古成約価格は850万円から1000万円程度。坪単価で40万円から47万円だ。安い! おそらく日本で一番安いタワマンと言ってよいだろう。

 だが販売当初から人気がなく築26年も経過しているのだから、さぞや廃墟化しているかと思いきや、予想に反して意外と住戸は埋まっている様子だった。実際このタワマンの紹介サイトによれば、住民の満足度は高そうだ。タワマンに住むある高齢者はインタビューに対し、タワマンを評価する理由に「雪かきをせずに済む」こと「断熱性が高く、光熱費が安い」ことを真っ先に挙げ、タワマンならではの「眺望の良さ」も加えて、満足度の高さを語っていた。

 だがタワマンが建つ上山市の現状は厳しい。1954年に市制が施行され70年がたつが、1955年に4万1848人だった人口は、現在(2025年4月)で2万7270人と35%も減少している。

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 市は手をこまねいていたわけではない。市は上山市振興計画を掲げ、2024年には第8次計画を発表している。その奮闘ぶりは第3次計画以降で掲げるスローガンを見ると明らかだ。

1966年 第2次計画発表

 

1974年 第3次計画 基本目標 「調和ある豊かな住みよいまち」

 

1986年 第4次エコー計画 将来像 「幸せのうたがこだまする都市かみのやま」

 

1996年 第5次エコー計画21 将来像 「人・自然、共に生きる快適創造交流都市かみのやま」

 

2006年 第6次計画 将来像 「健やかな交流都市かみのやま」

 

2016年 第7次計画 将来都市像 「また来たくなるまちずっと居たいまち~クアオルトかみのやま~」

 

2024年 第8次計画 将来都市像 「つながりつなげるいろどりのまちかみのやま」

 調和、豊か、幸せ、自然、快適、健やか、クアオルト(療養地)、つながり、多くの標語を並べてきた市の努力と想いはむなしく、1960年代後半以降は計画を刷新しても人口減少に歯止めがかからない状況は続き、2020年の国勢調査においてはついに過疎地域の持続的発展の支援に関する特別措置法に基づく過疎地域(全部過疎)に指定されている。

 残念ながら1999年に竣工したタワマンも市の人口減少を止めることに貢献できなかったのである。