なぜ対外的に説明がなされないのか?
また、ガバナンスが効いているのか疑われる不祥事が続きながら、ガバナンスや内部統制など組織の責任について、会社側は一切言及していない。
これらについては、常々私も気になっていましたし、メディアの夜回り取材も来ており、KADOKAWAが株主や社会に対して適切な説明をするべきではないかという思いを強くしました。
KADOKAWAは国文学者である父・角川源義が1945年に創業しました(当時の社名は「角川書店」)。私も1993年から、長年に亘って経営に携わってきました。持っていた株の一部は角川文化振興財団に寄付しましたが、いまも約1%の株を保有しています。創業家として、また株主として、現在の状況はとうてい看過できるものではありません。そこで、あまり前例のないことではあると思いますが、この3月、現経営陣に対して、二つの大きな問題について、説明責任を果たしてもらえるよう質問状を送ることにしたのです。外部取締役が務める監査委員会に対しても、同様の質問状を送付しています。
質問状では、「(ハッカー集団に対する)身代金支払いの有無」「情報セキュリティの取り組みに問題は無かったのか」「下請法違反の具体的な再発防止策」などについて詳細に聞いています。それはひとえに、KADOKAWAがより良い企業となり、今後も出版界を引っ張っていける立場でい続けることを願ってのことです。
私は既に経営からは退いた身です。会社に復帰したいというような思いから、質問状を送ったわけではありません。
KADOKAWAに質問状を送り、社外取締役であり、取締役会議長でもある鵜浦博夫氏にも対面し、現経営陣との対話を提案しました。そしてひと月以上が経って、4月23日に社長の夏野さんからようやく回答が来ました。しかし、内容はあまりにお粗末なものでした。
たとえば、「身代金支払いの有無」については「回答は差し控えさせていただきます」。「情報セキュリティの取り組みに問題は無かったのか」という問いに対しては、「サイバー攻撃の事実のみをもって、当社における情報セキュリティ対策に不備があったとは評価しえない」。「下請法違反の具体的な再発防止策」についても、「役職員に対する法令周知等をより徹底して行い、再発防止に努めております」と、何ら具体的な対策の記されていない答えだったのです。一事が万事、この調子でした。
これは到底、回答と呼べるようなものではないだろう。彼らはこれで済ませるつもりなのだろうか。経営陣の姿勢を世に問うべきではないか――そう考え、今回、取材に答える形で、質問状を公開することにしたのです。
それぞれのトラブルを詳しく見ていくと、いまのKADOKAWAの経営陣が抱える問題点が、よく見えてきます。
※本記事の全文(約1万4000字)は、月刊文藝春秋のウェブメディア「文藝春秋PLUS」に掲載されています(角川歴彦「KADOKAWA夏野剛社長は、説明責任を果たすべきだ」)。
全文では下記の内容をお読みいただけます。末尾には、角川氏の質問状全文、夏野社長からの回答書要旨も掲載されています。
・サイバー攻撃対応の何が問題か
・「金銭の支払いは厳に慎むべきもの」
・下請けへの一方的な通告は、優越的地位の濫用だ
・ガバナンス検証委員会調査報告書の問題点

