「いつでも訴えていいよ、勝つから」

 しかし相手もさるもの。1年ほど経った頃、今度はある販売店チャネルの代表を使って、「髭を剃れ」ときたのだ。「壇上に上がるとみっともないから」という、よくわからない理由だ。要はトヨタの嫌いな「目立つから」ということだったのだろう……。あまりのしつこさに、私はその1年後くらいに剃ることにした。

11代目社長を務めた豊田章男氏 ©時事通信社

 しばらくして、2019年のゴールデンウィークから2度目の髭を生やし始めた。

 もちろんコロナというマスクをする時期ということもあっただろうが、おもしろいことに今度は誰もが黙認……なのである。髭を生やすビジネスマンも増えたし、グローバル化も進み外国人ビジネスマンで髭を生やしている方も少なくない。

ADVERTISEMENT

「ついに、時流には勝てないと思ったのか」と髭を生やしたままでいると、ある会合で役員がまたも髭のことを言ってきた。私が「パワハラですよ!」と言ったところ、彼は「いつでも訴えていいよ、勝つから」と言うではないか。身体的な極めてプライベートなことを平気で指摘するその感覚が、私には信じられなかった。

 トヨタはグローバル企業であり、そこで働くイスラムやヨーロッパやアメリカなど多くの海外出身の方が髭を生やしている。その後も私は気にせず髭を生やし続けたが、なんとも言えない不快な思いが残った。

最初から記事を読む 「こんな契約では、自由な経営ができない」ディーラー関係者が明かす“トヨタの異変”…豊田章男社長の代から強まった「締め付け」とは

その他の写真はこちらよりぜひご覧ください。