自動車業界のみならず、日本を代表する企業の「トヨタ自動車」。世界での販売台数も2024年まで5年連続の1位に輝いており、その原動力には商品力もさることながら徹底的な効率化がある。

 しかしそれが度を超して、かつて“情のトヨタ”と呼ばれるほど良好だった下請け会社との関係が、ギクシャクしつつある。特に豊田章男氏が社長に就いてから顕著なようで――祖父の代から販売会社という立場でトヨタに仕え「伝説のカリスマディーラー」と呼ばれた小栗成男氏による新著『トヨタの曲がり角』(幻冬舎)から一部抜粋し、お届けする。(全3回の1回目/2回目を読む3回目を読む

11代目社長を務めた豊田章男氏 ©時事通信社

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 ほとんどの販売会社はトヨタ自動車と資本関係がないことは、何度も書いた。独立した企業と企業との取引であり、販売会社は自由に経営ができるはずである。従来は、トヨタ自動車と販売会社の間には、よい距離感と信頼関係があったのだ。

 しかし、もともとは販売会社を大事にする企業だったトヨタ自動車は変質してしまったように思う。トヨタ自動車は、「契約」によって販売会社の経営を縛るようになってきたのだ。かつての契約書に書かれていたのは、販売台数と車種くらいだった。ところが近年、急激に事細かな項目を設けるようになったのである。

 大きかったのは、2年ほど前から、車検や保険など、法律に抵触する問題が起きた場合、「いつでもトヨタ自動車が販売店に入って監査ができる」という契約内容に変わったことである。もちろん、法を破ってはいけないのだが、初めから契約書にこんな文言が記されていては、販売店としてもいい気持ちはしない。