自動車業界のみならず、日本を代表する企業の「トヨタ自動車」。世界での販売台数も2024年まで5年連続の1位に輝いており、その原動力には商品力もさることながら徹底的な効率化がある。
しかしそれが度を超して、かつて“情のトヨタ”と呼ばれるほど良好だった下請け会社との関係が、ギクシャクしつつある。特に豊田章男氏が社長に就いてからそれが加速しているようで――祖父の代から販売会社という立場でトヨタに仕え「伝説のカリスマディーラー」と呼ばれた小栗成男氏による新著『トヨタの曲がり角』(幻冬舎)から一部抜粋し、お届けする。(全3回の2回目/前回を読む/続きを読む)
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豊田章男前社長は、とても謙虚な方であり、経営者としてとても尊敬している。章男さんが社長に就任した当時、トヨタ自動車は大変な危機にあった。2008年、リーマンショックの影響で71年ぶりの連結営業赤字転落、2010年には世界規模でリコール問題があった。
さらに追い打ちをかけるように、2010年、トヨタのマスターテストドライバーだった成瀬弘さんが事故死、2011年は3月に東日本大震災発生……。社長就任後、いきなりやってきた度重なる危機を乗り越えていかれたのだ。
章男さんは、「トヨタ」のイメージを大きく変えた方だと思う。ご自身がプロドライバーであり、モータースポーツを盛り上げたいと、「86」というスポーツカーをスバルと共同開発。章男さん自身も、テストドライバーとして何度も試乗したという。「86」というモータースポーツショップも開いた。ショップそのものは閉めてしまったが、「86」はマニアックな人気があった。こうしたトヨタ自動車のユニークな取り組みは、新たなファン層を開拓したのではないだろうか。
