自動車業界のみならず、日本を代表する企業の「トヨタ自動車」。世界での販売台数も2024年まで5年連続の1位に輝いており、その原動力には商品力もさることながら徹底的な効率化がある。
しかしそれが度を超して、かつて“情のトヨタ”と呼ばれるほど良好だった下請け会社との関係が、ギクシャクしつつある。特に豊田章男氏が社長に就いてからそれが加速しているようで――祖父の代から販売会社という立場でトヨタに仕え「伝説のカリスマディーラー」と呼ばれた小栗成男氏による新著『トヨタの曲がり角』(幻冬舎)から一部抜粋し、お届けする。(全3回の3回目/初めから読む/前回を読む)
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私はこれまでの人生で2回ほど髭を伸ばしている。オペラを始めたとき、髭を生やしている男性オペラ歌手が多いことから、格好いいなと思って伸ばしてみたのだ。
髭を伸ばしていたとき、ちょうどトヨタの代表者会議が開かれ、私は販売店の代表者として販売店表彰の際に壇上に上がった。すると、トヨタ側から「髭を剃れ」と言われたのだ。一度ではない。その後、会合などことあるごとに「剃りなさい」と言われるのだ。
当時、髭を生やしていたトヨタ自動車の役員もいたのだが、彼のことは看過し、私には言ってくる。私が再三「なぜ髭がだめなのか?」と聞いても明確な回答は返ってこない。あまり言うなら「そんなものはパワハラだ!」と意を固め、結局私はそのまま髭を伸ばすことにした。
