田代良徳は元お相撲さんである。玉ノ井部屋に所属し、しこ名は東桜山。幕下7枚目まで番付を上げたが、関取にはなれなかった。

 2007年の秋場所で引退。その後は紆余曲折を経て、インドや中国の人気映画に俳優として抜擢されるなど、その活躍の場を広げてきた。波乱万丈の人生を明かした『SUMOOOO!!』より一部を抜粋。大柄の田代が胸の痛みを訴え入院した田代を気遣い、旧知の仲である元横綱の朝青龍が怒った深い理由とは。(全3回の3回目/#1から続く)

元幕下力士の田代良徳さん ©文藝春秋

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2度目の引退

 心臓は弱ってはいたが、幸い大きな問題はなかった。何番も相撲を取ったり、ジムワークで追い込んだりしていたこと、何よりも体重が増えすぎたことで過負荷がかかっていたのだ。水を抜いた上で減量していけば、緩やかに回復していくだろうと言われた。

 病院の食事は味気なかったが、病室からの眺めはよかった。東京の街を見ながら田代は考えた。アメリカやサウジアラビアで倒れなくてよかった。もっといえば、土俵の上で死ななくてよかったと安堵した。力士俳優として相撲ショーに出演するのはもう難しいかもしれない、と覚悟した。

 突然訪れた2度目の引退。だが、寂しさよりも命を拾ったことへの感謝の方が大きかった。神様がもうやめなさいと言っているのだと田代は納得した。

現役時代の田代さん(本人提供)

退院と減量

 入院は10日ほどで済んだ。朝青龍にも連絡した。

田代 「救急車で運ばれました」

朝青龍 「だから俺言うた。君に」

田代 「はい」「これから気をつけます」

朝青龍 「やっぱこんなことになるんだね」「前もって言ってたなぁ」

田代 「そうですね。太りすぎでした」

朝青龍 「なんか気になってた」

田代 「ありがとうございます」

朝青龍 「注意してたな」「よく長い時間飛行機乗るもん」「こんな体重があるのに」