韓国大統領選が3日投開票され、進歩(革新)系最大野党「共に民主党」の李在明氏が大統領に選ばれた。李氏をめぐっては、過去の日本を叩く過激な発言から、「反日左派」と位置付ける報道が日本であふれている。ただ、李氏の生い立ちや周囲とのやり取りを観察すると、そんな単純な人物ではなさそうだ。

どの発言も、李在明の本心ではない

「私は日本の国民に強い好感を持っている」「私が日本に敵対的だという先入観がある」。李氏は選挙期間中の5月20日、SNSで公開した動画のなかで、自分が日本に旅行した体験などを交え、一生懸命日本を持ち上げた。2023年8月、日本による福島第一原発の処理水の海洋放出について「核汚染水放出は第2の太平洋戦争として記録されるだろう」と語った人物とは思えない変わりぶりだ。

選挙戦での李在明氏 ©時事通信社

 ただ、韓国政界の元老の一人は「どの発言も、李在明の本心ではない。彼は“仮面をつけた男”だからだ」と語る。その一例として、2022年の前回大統領選中の朴槿恵元大統領に関する発言を挙げた。李氏は当時、セミナーで「尊敬する朴槿恵大統領」という表現を使ったところ、支持者たちから強い反発を受けた。李氏は後に、「本当に尊敬していると思ったのか」と修正した。元老は「その都度、周囲の雰囲気をみて態度を変える。どれが本心なのかはわからない」と語る。

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 複雑な人格はその出生と深い関係がある。李在明氏は1963年生まれとされるが、64年生まれという説もある。慶尚北道(韓国南東部)で生まれたが、極貧の生活だったため、両親が正確な生年月日を記録しておかなかったからだという。当時の義務教育だった小学校は何とか卒業したものの、その後は引っ越し先の京畿道城南市で少年工として長く働いた。城南市で住んでいた地区は、ソウルの再開発などで追い出された人々が主に住む貧民窟だった。小学校でも工場でも反抗的な態度を示すため、よく先生や上司に殴られたという。