北朝鮮軍は15日、韓国と連絡する道路「京義(キョンウィ)線」「東海(トンヘ)線」の一部を爆破した。朝鮮中央通信は17日、北朝鮮が韓国を「徹底的な敵対国家」と憲法に規定したことも示唆し、南北間の緊張がかつてなく高まっている。

 朝鮮中央通信は今回の道路爆破を「敵対勢力の重大な政治的・軍事的挑発策動によって」起きた措置だと強調した。

 同通信が指摘した「挑発策動」とは、北朝鮮外務省が11日に明らかにした、韓国の無人機(ドローン)の平壌上空への進入を指すとみられる。同省によれば、無人機の進入は10月3、9、10日の計3回にのぼり、北朝鮮を誹謗するビラを撒いたという。北朝鮮はなぜ、無人機の進入に興奮しているのか。

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金正恩氏とキムジュエ氏 ©AFP PHOTO/KCNA VIA KNS

韓国敵視で、独裁を守りたい北朝鮮指導層

 ひとつには、無人機が撒いたビラに金正恩総書記やキムジュエと呼ばれる娘を非難する言葉などが盛り込まれていたからだ。北朝鮮では最近、韓国のドラマや音楽を視聴する市民が増え、韓国に対するあこがれも強まっている。

 韓国を敵視する政策の背景には、韓国へのあこがれを禁じて独裁を守りたい北朝鮮指導層の思惑がある。ビラを撒かれて、市民に動揺が広がったら、たまったものではないだろう。

 だが、韓国を敵視する政策は、長い間、平和統一を国是としてきた北朝鮮の内部で大きな支持を得られていない。金正恩氏は韓国を「徹底的な敵対国家」とする憲法改正を行ったが、その不満を抑えるためにも道路爆破など派手な行動に出て国民の視線を外にそらす必要があったのだろう。

 道路爆破など派手な行動に出て、国民の視線を外にそらさないと、憲法改正への反発が広がりかねない。

金正恩氏 ©AFP PHOTO/KCNA VIA KNS

“ヒズボラ”の事件との大きな関係

 そして、無人機の進入は軍事的にも深刻なダメージを北朝鮮に与えている。これは、イスラエル軍が9月27日に、イスラム教シーア派組織ヒズボラの指導者ハッサン・ナスララ師を空爆によって殺害した事件と大きな関係がある。

 ヒズボラと北朝鮮は協力関係にある。イスラエル軍は13日、レバノン南部のヒズボラの地下施設から北朝鮮製の武器・弾薬が700点以上見つかったと発表した。北朝鮮はこれまで、小銃やロケットランチャーなどをヒズボラに提供してきたが、最大の支援は地下施設やトンネルの建設だったとされる。

 イスラエルのシンクタンク「アルマ教育研究センター」が21年7月に発表した資料によれば、北朝鮮の「朝鮮鉱業開発貿易公社(KOMID)」が06年以降、ヒズボラの地下施設・トンネルの建設作業を支援した。