今年の1月下旬、中国・吉林省の経済特区に派遣されていた北朝鮮の女性労働者たちが、北朝鮮が運営する会社に対し集団抗議デモを起こした。統制の厳しい北朝鮮国内では考えられない事件は、なぜ起きたのか。
抗議デモが起きた現場は、吉林省和竜市「南平鎮経済開発特区」。「今回のデモは数年間、外部の出入りが徹底的に統制された閉鎖空間の中で、極度の精神的苦痛を受けてきた北朝鮮女性労働者たちに、会社の賃金未払いという苦痛が加わり、我慢できず爆発した事態だった」(中国の北朝鮮消息筋)
デモは1月9、10日頃に始まり、女性労働者たちは1週間にもわたって会社の事務所の前で抗議を繰り広げたという。デモは瀋陽駐在の北朝鮮領事館から領事が来たことによって鎮静化。その後、現地に派遣されていた軍保衛司令部の保衛員がデモの主導者を探し出し、100人余りの女性労働者を北朝鮮に送還した。
「主導者らは金正恩委員長と国家の対外的地位を傷つけたことや暴力罪で、政治犯収容所に送られただろう」(同前)
デモが起きたことが漏れないよう、すべての携帯電話を調査
事件後に南平地区にはデモの再発を防止する名目で、中国安全部要員と北朝鮮領事館職員が常駐した。中国安全部はこの事実が韓国や西側諸国に知られることを恐れ、旧正月期間中に北朝鮮労働者の携帯電話を全数調査し、通話記録と携帯メールの内容まで確認したという。
今回の事件は、外貨を稼ぐ目的で設立された、北朝鮮国防省傘下の戦勝貿易会社で働く、2300人の労働者が起こしたものだ。
工場では、賃金の未払いが発生しており、女性労働者たちは駐中北朝鮮大使館と駐瀋陽総領事館、北朝鮮労働党本部にその旨を申告していた。
そして、申告を受けて内部調査が入ると、戦勝貿易会社社長は突如として自殺したのだ。