普通の韓国人の出世コースとはまったく違う
その後、奨学金を支給されたソウルの中央大学に進み、司法試験に合格して弁護士になった。ただ、人脈はまったくなく、当時、城南市などで活動していた左派系市民団体「京畿東部連合」と親しくなり、何度か落選した後の2010年、城南市長に当選。18年3月まで務めると、同年6月に京畿道知事に、22年には国会議員にと上り詰めた。
韓国政府の元高官は「普通の韓国人の出世コースとはまったく違う」と語る。元高官によれば、韓国で政治家になるためには、学歴と人脈がモノを言う。「SKY」と呼ばれるソウル大、高麗大、延世大という名門大学を卒業して箔をつけると同時に、学閥という人脈を手に入れる。別の元高官は「李在明は既得権を持った人々から支援をまったく受けず、大統領にまで上り詰めた史上初めての人物だ」と語る。
李氏は韓国の常識を破るために、常に闘争を繰り返した。ある政治家は李氏と生放送のラジオ討論会に出席した。あらかじめ発言時間が等分されていたが、先にしゃべった李氏は、この政治家の持ち時間もほとんど使い切ってしゃべり続けた。呆然とした政治家が李氏に文句を言うと、李氏は平然とした表情で「あなたは政治というものを知らないんだな」と言ってのけた。
周囲に自殺者が出ても政治家を続けていく権力への執念
政治家として闘争するためだったのか、常に周囲では収賄などの疑惑が渦巻いた。城南市長時代の土地開発を巡る収賄疑惑や、北朝鮮への不正送金疑惑を巡っては関係者が自殺する騒ぎも起きた。別の韓国政治家は「法的な責任はないのかもしれないが、周囲で4人も5人も関係者が死ねば、普通は政治家を続けていられない。権力への執念がそうさせるのか、自分には理解できない」と語る。
李氏は「共に民主党」代表として24年総選挙の公認権を駆使し、自分に反対する勢力を党から追い出した。だが、そんな李氏の剛腕ぶりに不平や不満の声は聞こえてこなかった。「国民の力」関係者は「追い出された政治家から目立った不満の声も出なかった。ものすごい党内掌握力だが、どうしてそんな力があるのかがわからない。政治資金がよほど潤沢なのだろう」とやっかみ半分に語る。
