政治闘争を繰り広げた末の李氏の政治手法は「自分の本心を明かさない」スタイルだ。会議をしても、自分から口を開くことはない。閣議で議論もせず、一方的に発言していた尹錫悦前大統領とはまったく違う。側近たちに様々な意見を述べさせる。一対一で話を聞くときは、それだけでは即断しない。必ず、複数の意見を聞いて、どれが自分の利益に一致するのか考えたうえで判断する。側近の一人は「みな、自分は李在明氏と親しいと思っている。でも、李在明氏はそう思わせているだけで、誰も信じていないかもしれない」と話す。

「今よりも難しい状況に…」日韓関係の見通し

 尹前大統領が改善した日韓関係はどうなるのか。韓国の専門家は「李氏は政策に関心がない。関心があるのは権力だけだ」と語る。そのうえで、「韓国市民は韓日関係が改善したことを歓迎している。そうであれば、李氏も韓日関係を維持しようとするはずだ」と話す。

 もちろん、「日韓関係の重視」は李在明氏の政治哲学ではない。李氏は非常戒厳を批判して大統領になっただけに、当初は高い支持率を誇るとみられる。しかし、トランプ米政権による高関税政策など韓国を取り巻く状況は厳しい。前述の専門家は「ハネムーン期間が過ぎれば、国民の李氏を見る目は徐々に厳しくなるだろう」と話す。

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 韓国の歴代大統領は過去、支持率の低下を挽回するため、わざと対日強硬策を打ち出して国民の歓心を買おうとしてきた。石破茂首相がどんなに頑張っても、李在明氏の仮面の下の素顔をのぞくことはできないだろう。韓国の駐日大使経験者は「李氏は単純な男ではない。韓日関係がすぐに悪化するとは思わないが、今よりも難しい状況に置かれる可能性は高い」と語った。

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