欲望が渦巻く街、新宿・歌舞伎町。きらびやかなネオンに彩られた“日本一の歓楽街”は、一方で悪質ホストや売春といった問題と隣り合わせでナイトビジネスに関するトラブルも多い。
そんな新宿に拠点を置き、“歌舞伎町弁護士”として数多くの依頼を解決してきたのが若林翔氏だ。今回は、若林氏の新著『歌舞伎町弁護士』(小学館)から一部抜粋し、実際にナイトビジネスの現場で起きたトラブルを紹介する。(全3回の3回目/初回から読む/前回を読む)
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子育ての熱意にあふれた人がいる一方、諸般の事情から中絶を選ばざるを得ない人もいる。「親子関係が確定すれば、中絶費用や永代供養代を負担する」との相手方の同意を得て、DNA鑑定の申し込みを行ったデリヘルに勤める女性は、なかなかのくせ者だった。
鑑定を行うラボに細胞を送り、人工妊娠中絶の予定日も決定、DNA鑑定の手続きは順調に終えることができた。しかし、その後、鑑定結果がなかなか知らされない。
彼女に電話を入れても出ないので、店長にかけたが、彼も出なかった。ラボに確認すると「鑑定結果は出ている」が「開示できない」と告げられた。なんと、彼女は鑑定料の一部(先払い分)を振り込んでいなかったのだ。
私はファイルを開き、彼女との打ち合わせの記録を確認した。そこにはたしかに《鑑定料、振り込み済み》と書かれていた。