欲望が渦巻く街、新宿・歌舞伎町。きらびやかなネオンに彩られた“日本一の歓楽街”は、一方で悪質ホストや売春といった問題と隣り合わせでナイトビジネスに関するトラブルも多い。
そんな新宿に拠点を置き、“歌舞伎町弁護士”として数多くの依頼を解決してきたのが若林翔氏だ。今回は、若林氏の新著『歌舞伎町弁護士』(小学館)から一部抜粋し、実際にナイトビジネスの現場で起きたトラブルを紹介する。
客と“本番行為”をしてしまったデリヘル嬢は、若林氏の下を訪れて「赤ちゃんを堕ろしたい」と明かした。話を聞くと、客と本番行為をして、妊娠してしまったという。彼女と一緒に相談した店長は「うちの子は『ゴム付けて』と言った。ですが、先方は『そんなことは言われていない』と……」と困惑した様子だ。彼女は中絶を希望しているが、お金がなくなかなか踏み切れないでいる――。 (全3回の2回目/前回を読む/続きを読む)
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「本番行為を認めた男性に『妊娠』の事実は伝えたのですか?」
「はい。彼女から相談があったので、僕から連絡をしました。そしたら『恐喝するのか!』と激高して、切られちゃって」
店長は言った。まあ、相手が驚くのも無理はない。性感染症の検査の費用や休業補償もきちんと払っているのに、あとから妊娠したと言われたとなると、美人局や恐喝されているのではないかと疑うのも理解できる。
「妊娠の可能性がある期間に、本番行為をした相手は、この男性1人だけですか? 他に、たとえば今付き合っている人とのセックスは?」
「今、付き合っている人はいません」
「男友達とのワンナイトみたいなものは?」
「してないです」
「この男性だけ?」
「はい」