欲望が渦巻く街、新宿・歌舞伎町。きらびやかなネオンに彩られた“日本一の歓楽街”は、一方で悪質ホストや売春といった問題と隣り合わせでナイトビジネスに関するトラブルも多い。

 そんな新宿に拠点を置き、“歌舞伎町弁護士”として数多くの依頼を解決してきたのが若林翔氏だ。今回は、若林氏の新著『歌舞伎町弁護士』(小学館)から一部抜粋し、実際にナイトビジネスの現場で起きたトラブルを紹介する。(全3回の1回目/2回目を読む3回目を読む

「歌舞伎町弁護士」の下に、赤ちゃんを堕ろしたいと話すデリヘル嬢がやってきた 写真はイメージ ©maruco/イメージマート

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 デリヘルの女性は「堕ろす」と言ったが、法律用語では「人工妊娠中絶」である。そして、法的な面で「人工妊娠中絶」を規定しているのが、「母体保護法」だ。この法律の解釈によって、人工妊娠中絶手術ができる期間は「妊娠から21週と6日まで」と決められている。

 依頼者であるデリヘルに勤務する女性は、すでに妊娠18週目に入っていた。なぜ、彼女は赤ちゃんを堕ろすために弁護士を必要としているのだろうか。

「父親が誰かはわかっているんです」

 開口一番、彼女は言った。

「私、法律でダメだってわかっているから、本番は絶対やっていません。お客さんからいろいろ誘われても、お金をいっぱいあげるって言われても、絶対やってきませんでした」