「中絶費用の援助をする気がないわけではありませんが…」

 それがファイナルアンサーだったので、私は代理人として男性に内容証明を送った。彼女はもう18週目に入っており、3週間以内に手術をしなければ、人工妊娠中絶が不可能になってしまうからである。

 ほどなく、相手の男性から連絡があった。最初は美人局などを疑っていたが、丁寧に説明したところ彼女が妊娠していることについては理解をしてくれたようだ。

「中絶費用の援助をする気がないわけではありませんが、DNA鑑定で、自分が父親だと証明してもらうのが先です」

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 そのメッセージを彼女に伝えると、彼女は両目から涙をあふれさせ、声を震わせて泣き出した。

男性客は中絶費用の援助をする意向を示した ©beauty_box/イメージマート

 私は一足先にDNA鑑定の業者と話し、事前に手続きをしておけば、中絶手術の際に胎児からのDNA採取をして、鑑定が可能だと確認していた。

「きっちり段階を踏めば間に合います。DNA鑑定して父親だと確定すれば、彼は中絶の費用を負担する意向を示していますから」

 そう声を掛けると、しゃくり上げながら彼女は言った。

「全額?」

 それは難しい部分がある。今回の妊娠は、2人が合意した本番行為の結果だ。彼だけに非があるわけではないだろうし、彼はすでに30万円を支払っているのだから。