デリヘル嬢は「ごめんなさい、ごめんなさい」と泣きじゃくった

 とはいえ、さして腹は立たない。依頼者は嘘をつく。捜査官が捜査の初期段階で、ホシを決めつけるのと同じぐらいの頻度と考えればいい。

 状況を把握したので、私は2人に連絡して《鑑定料を振り込まないかぎり、結果はわからない。結果がわからなければ、“父親”と交渉もできず、中絶費用も永代供養代も回収できない》とメッセージを送った。

彼女は「鑑定料」を支払ったと言っていたが… 写真はイメージ ©maruco/イメージマート

 すると、その日のうちに彼女と店長がやって来た。私は予定が詰まっていたので断ったが、しつこく言うので深夜に事務所を開けた。到着した時から彼女は泣いていた。「ごめんなさい、ごめんなさい」と泣きじゃくっているが、泣いて何かが解決するわけではない。

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 わざわざ店長が来たのはなぜかと思ったら、なんと、彼女は妊娠中もデリヘルに出勤していたのだった。それなのに、どうして鑑定料が支払えないのか。

「店に借金もあるんです」

 店長が言った。

DNA鑑定の末に分かった「衝撃の結果」

「センセ……」

 彼女が流し目で言った。

「鑑定の……グス、結果が、グス、わかったら……ねえ、グス、120万円……でしょ」

女性は泣きながら立て替えを求めた ©graphica/イメージマート

 1週間だけ立て替えてほしい? そいつは無理な相談だ。

 店から借りたのか、誰かに借りたのか、あるいは自分のへそくりか。事情は知らないが、彼女は十数万円の鑑定料全額を振り込み、結果が判明した。

 彼女のお腹に宿った小さな命の父親は“その客”ではなかった。相手方であったその客からは「自分じゃないのに疑われてDNA鑑定まで協力させられて」、とクレームを言われたが、そりゃあそうだろう。

 こちらとしても謝るしかない。

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