反ユダヤ主義に毒され、中国共産党と関係を持ち、不逞留学生が跋扈する――トランプ大統領にこんなレッテルを貼られた名門が揺れている。ハーバードの現役学生、卒業生、研究者50人余りが世界一の大学の現状を語る。

 2025年5月29日、快晴のハーバード大学キャンパス。まばゆい新緑と初夏の光に包まれた朝、黒と深紅のガウンをまとった卒業生たちの前で、アラン・ガーバー学長がかみしめるように言葉を紡いだ。

「この街から、全米各地から、そして世界中から集った2025年の卒業生の皆さん。まさに、あるべき姿です」

学長のアラン・ガーバー氏

 轟くようなスタンディングオベーションで学長のスピーチに賛同を示した卒業生たち。その脳裏によぎっていたのは、トランプ政権による大学自治への介入と、学問の自由と全ての学生を守るために体を張ったハーバード大の数カ月間にわたる死闘だった。

ADVERTISEMENT

トランプ政権vs.ハーバード大学

「今年1月の第二次政権発足以降、トランプ大統領は名門大学を標的に圧力をかけ続けてきました」(在米ジャーナリスト)

 パレスチナ自治区のガザに対するイスラエルの攻撃をきっかけに、アメリカ国内の大学ではイスラエルへの抗議活動が活発化。一連のデモなどを“反ユダヤ的”と見るトランプ大統領は、大学当局が適切な対応をとっていないとして、

「学術プログラムや職員の採用慣行の見直し、DEI(多様性・公平性・包摂性)イニシアチブの完全撤廃など、アメリカ人優先、外国人排斥的な政権の保守的な政策を受け入れるよう要求しています。従わない大学に対しては政府からの助成金停止をちらつかせており、実際にこの圧力に屈してこれまでの学風を一変させた大学もあります」(同前)

 だが、アメリカ一の名門大学であるハーバードは大統領の要求を撥ねつけたことで、トランプ政権との全面対決に突入する。