男性陣は、基本的に夜まで家に帰ってこない
――ジェームスさんは一体どこへ行っているんですか?
鶴本 彼に限らず、マサイ族は村の中で皆それぞれに役割があって、女の人は基本的に家事や子どもの面倒をみて、男の人は放牧に行くんですね。
あと、男性陣は長老とかとのミーティングもあって忙しいから、朝になるとすぐ出掛けて、基本的に夜まで家に帰ってこないんです。
――携帯で話すことも難しい?
鶴本 マサイ村の中でも、一歩出ると電波がない場所も多いですし、そもそも充電がしづらいので電池切れのことも多くて。
あと皆、電話をめっちゃするんですよ。同じ集落で家が数十メートルしか離れてない距離でも、「お兄ちゃんのところに行って◯◯取ってきて」とかも電話するので、5分おきぐらいにかかってくるという。だから通話中のことも多いし、それで電池切れにもなるという(笑)。
――ジェームスさん以外に悩みを相談できる人はいたのでしょうか。
鶴本 私が性格的にため込むタイプということもありますし、言語の壁と、結構気を遣っていたので、なかなか相談はできなかったですね。
マサイの皆はウェルカムしてくれてるし、子どもたちも色々助けてくれたんですけど、私が“村で皆で生きる”っていうのに全然最初慣れなかったんです。それに、相談したことがネガティブに伝わったら嫌だなっていう思いもあったので、心を閉ざしていた時もありました。
家にいない夫へ不満爆発
――ジェームスさんと衝突することも?
鶴本 「なんで家にいないの?」から始まって、結婚したのに一緒に過ごせないことに私が一方的に苛立つような感じで、ケンカをよくしました。それに、マサイでは男の人の方が立場が上なので、その点でもよく衝突していました。
私は母子家庭育ちで気が強い方だし、大人しく男の人の言うことを聞いて家にいるだけ、っていうのは辛かったんです。
でも、彼からすると、「こういうものだから」「これがマサイの決まりだから」しかない。覚悟して行ったつもりでしたが、価値観の違いは想像以上に大きかったです。
写真=石川啓次/文藝春秋
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