「盗撮さえしなければ、いい夫なんです…」

 Aのケースでは妻は即離婚を決意しましたが、このケースのように「それでも別れない」選択をする妻もいます。経済的理由、世間体、子どもとの関係……理由はさまざまですが、「妻の会」の参加者の女性の大半は婚姻関係を維持しています。「盗撮さえしなければ、いい夫なんです……」という言葉もよく聞かれます。

生まれてくる子どものことも考え、B子さんは離婚を選択しなかったが… ©ponta/イメージマート

 また性犯罪者とはいえ、家庭内では子煩悩で「イクメン」、子育てにも積極的に関わっている人もいます。実際、「子どもにとってはいい父親。私の一存で子どもたちから『パパ』を奪っていいものか……」と葛藤する人も大勢います。

「自分の娘は可愛がるのに、なぜ他人の子どもには卑劣な性加害をするのか!」と憤る方も多いと思いますが、性犯罪者の頭の中には「それとこれとは別」という認知の歪みが存在している――それも性犯罪者の実態です。

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 B子さんのケースも「子どものために別れない」という選択をした家族の例です。新しい家族を迎え入れようとしているタイミングで夫が性犯罪に走るとは、B子さんのストレスは凄まじいものです。さらに彼女は、「妊娠していて夫の性欲を受け止めきれなかったから、夫が盗撮行為を犯したんだ」という世間からの視線にもさらされました。しかし、この言説がいかに的外れなものであるかについては、第4章で解説していきます。

 B子さんは定期的に「妻の会」に通い、夫もクリニックの治療プログラムにしばらく通い続けました。

 実は、後日談があります。