「あなたがもっと理解していれば…」夫の両親は、B子を非難した
逮捕後、医師による盗撮事件として、メディアにも多数取り上げられた。夫の病院には報道関係者が押しかけ、B子の勤務先にも取材の電話が相次いだ。夫は示談が成立し不起訴となったが、勤めていた病院は解雇。医師としての再就職も困難を極めたが、経済的にはB子の収入でなんとか生活できる状況だったという。
医療関係者の間で噂は広がり、夫婦で地域を離れることを決意した。
B子は離婚を考えなかったわけではないが、生まれてくる子どものことを考えると決断できなかった。夫の両親からは、妻を非難する声も上がった。「あなたがもっとあの子のことを理解していれば」という言葉に、B子は何度も深く傷ついた。
盗撮犯というと「モテなさそうな独身男性」というイメージがあるかもしれませんが、既婚者も少なくありません。クリニックの統計によれば、盗撮加害者521人のうち、結婚歴のある人が6割程度でした*1。
*1:斉藤章佳『盗撮をやめられない男たち』扶桑社、2021年
ある日突然、夫が性犯罪で逮捕された妻の苦しみは、父親や母親とは別次元のものです。性犯罪者の妻は「なぜ夫はそんなことをしたのか?」という疑問、同じ女性として被害者への罪悪感、夫への生理的な嫌悪感や怒りが湧き上がり、引き裂かれます。このB子さんも妻として、新たに生まれてくる子どもの母親として、そしてひとりの女性として、二重三重の苦しみに挟まれています。このような状況を加害者家族における「ダブルバインド現象」と呼んでいます。