「スネイプ先生が黒人なんてあり得ない!」と怒る原作ファンも

 イギリス出身のエッシードゥは、ドラマ『I MAY DESTROY YOU/アイ・メイ・デストロイ・ユー』(2020年)でエミー賞助演男優賞候補となり、『ラザロ・プロジェクト 時を戻せ、世界を救え!』(2022年~2024年)では英国アカデミー賞にノミネートした実力派。その経歴と実力は申し分ない。

パーパ・エッシードゥ(Harry Potter公式Instagramより)

 だが、やはり同役はリックマンのイメージが強く、衝撃を受けたファンも多い。2016年に『ハリー・ポッターと呪いの子』でアフリカ系のノーマ・ドゥメズウェニが大人になったハーマイオニーを演じたときには、原作者のJ・K・ローリングは「ハーマイオニーが白人だとは書いていない」と、反対派を一蹴した。

 しかし、スネイプに関しては、原作で白人である可能性が高い外見的特徴が描写されている。原作でのスネイプは、日本語版では「肌は土気色」と訳され、黄みがかった不健康そうな肌の色をしているとされている。

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 この翻訳は間違っているわけではないが、原文の「sallow」には「青白い」というニュアンスもある。こうした特徴から、おそらく彼が白人であると考える読者が多いだろう。そこへアフリカ系の俳優がキャスティングされ「原作に忠実」とはどういうことなのか、と戸惑う声もある。

 またスネイプを黒人にすることで、ストーリー上、少々問題になる可能性も考えられる。ハリーの父ジェームズたちは、学生時代、スネイプをいじめていた。こうなると、彼らは単純に気の弱い根暗な同級生をいじめていただけでなく、人種差別的なニュアンスも含まれてしまうのではないか。

 その後、5月28日には主人公ハリー・ポッター役と親友のロン・ウィーズリー役、ハーマイオニー・グレンジャー役のキャストも発表に。

左からアラベラ・スタントン、ドミニク・マクラフリン、アラステア・スタウト(Harry Potter公式Instagramより)

 3万人以上が参加したオーディションの結果、見事ハリー役を射止めたのは、スコットランド出身のドミニク・マクラフリン。彼は2020年ごろからパフォーマンス・アカデミー・スコットランドで演技の訓練を受け、2025年には映画『Grow(原題)』、ドラマ『Gifted(原題)』の公開が控えている。

 ロンを演じるアラステア・スタウトは、本作が俳優デビューとなる新人。そして主人公トリオのなかで注目を集めたのは、ハーマイオニー役のアラベラ・スタントンだ。2023年から2024年にかけて、ロンドンのウエストエンドで上演された『マチルダ・ザ・ミュージカル』で主演を務めた彼女は、3人の中でもっとも演技経験があるといえる。

 しかしやはり、彼女が有色人種であることが論争のもとになった。一方で原作に記された「毛量の多い縮れ毛」「前歯が大きい」という外見的な特徴は、映画版でハーマイオニーを演じたエマ・ワトソンよりもスタントンのほうが原作の描写に忠実だと歓迎する声も多い。