『ジークアクス』は『ガンダム』シリーズの制作会社サンライズと、『新世紀エヴァンゲリオン』(以下、エヴァ)シリーズの監督として知られる庵野秀明が代表取締役を務めるスタジオカラーの共同製作となっている。
監督は庵野の右腕として『エヴァ』に関わってきた鶴巻和哉、脚本は榎戸洋司。「もしも『エヴァ』を作ったチームが『ガンダム』を作ったら?」という夢の企画だったため、放送前から注目されていた。
前日譚となるifの一年戦争パートには、庵野秀明が脚本として参加している。そのため、『シン・ゴジラ』、『シン・ウルトラマン』、『シン・仮面ライダー』といった庵野が制作に関わった「シン」の冠がつくリブート作品と印象がとても似ている。
今回の『ジークアクス』では『ファーストガンダム』の監督・富野由悠季が残しているトミノメモに書かれた話数が短縮された影響で本編に入り切らなかった設定やアイデアが劇中に散りばめられている。
他にも富野が書いたノベライズ小説の設定など、これまで発表されたガンダム関連のネタが随所に散りばめられており、情報量が異常に多いのが『ジークアクス』の特徴だ。
放送終了後にはXやYouTubeに無数の考察やファンアートが溢れかえる
監督は鶴巻和哉なので、『ジークアクス』を庵野作品として語るつもりはないのだが、劇中に登場する膨大な固有名詞の文脈を視聴者が即座に解析して、放送終了後にはXやYouTubeに無数の考察やファンアートが溢れかえる状況は、テレビシリーズの『エヴァ』で起こった現象の最新形と言って間違えないだろう。
本作の情報量の多さといびつなストーリー展開は、1クール(3ヶ月)で12話弱しかないという尺の短さも大きいだろう。
昔の『ガンダム』シリーズは1年にわたって40~50話かけて放送されたため、少年少女の成長物語や物語の背後にある世界観を丁寧に描けたが、映像のクオリティにはバラつきがあった。
対して、近年のアニメは1クールが多く、その短さゆえに映像のクオリティを維持できるのだが、物語を語る余裕がないため、駆け足になりがちで、超展開に次ぐ超展開で視聴者を引っ張るようになっている。
こういったストーリーテリングは、2011年の『魔法少女まどか☆マギカ』から定着したもので、現在放送中の『前橋ウィッチーズ』や『アポカリプスホテル』にも影響が伺える1クールアニメならではの見せ方だ。
続きが気になるという意味ではとても面白い見せ方だが、もう少しキャラクターを丁寧に描いてほしいという気持ちは、昔からのアニメファンとしてはある。