2021年以降のデータと合わせて、「その前の5年間」である2016~2020年の平均データでの順位も併記してある。大阪府立北野、東京都立日比谷、神奈川県立横浜翠嵐あたりは、この5年間で大きく順位を上げていることがわかる。

 また、表にはしていないが、手元にある2016~2020年のデータと2021~2025年のデータを比較して興味深いのは、全体的に上位校の合格者数が減っていることだ。たとえば、開成233.4→214.0、灘179.0→165.8、東海177.0→162.6。いまの順位が絶対ではないということだ。

1学年の生徒数が違うので「合格率」では開成は6位

 上記ランキングは単純に合格者数での比較なので、当然ながら、1学年の人数が多い学校が有利になる。1位の開成が1学年約400人であるのに対し、2位の灘は約220人と倍近く違う。そこで、合格者数を卒業生数で割った合格率によるランキングトップ20もつくってみた(表2)。

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2021年~2025年 東大+京大+医学部合格率ランキング

 1位に灘が躍り出る。1学年約160人の筑波大附駒場が2位。5位までは1学年200人以下の規模の学校が並ぶ。これらの学校が1学年の人数を2倍にして開成や東海と同じ規模になったら、教育の質も入学者の学力も変わるので、おそらくこの合格率を保つのは難しいだろうが、現状の生徒たちがこれらの進学先をどれだけ身近に感じているのかを推し量る参考にはなるはずだ。

 参考として、東大、京大、国公立大学医学部医学科のそれぞれのランキングもトップ20まで掲載しておく。まずは東大(表3)。見慣れたランキングである。

2021年~2025年 東大合格者数ランキング

 近著『超中学受験論』(二見書房)でも述べているが、高校別の東大合格者数は次のような式で表せる。

「(1)その学校の通学圏内にいる子どもの数・人口」×「(2)中学入試なり高校入試の時点での学校の偏差値・学力帯」×「(3)生徒の価値観の画一性」。

 実際には、(1)の子どもの数というパイの中に含まれる学力上位の子どもたちを、(2)の学力帯的に競合する学校で奪い合い、それが直に東大の合格者数に跳ね返る。(1)の通学圏内の子どもの数は、電車の路線図と明確にリンクしている。たとえば1970年代の開成の躍進は、たまたま学校の目の前に、当時の国鉄と営団地下鉄が連絡する西日暮里駅ができた影響が大きい。

開成高校 ©文藝春秋

 交通の便が良い都心では、(1)の通学圏内にいる子どもの数は多いが、多くの学校がひしめいているので、生徒の奪い合いはバトルロワイヤルの様相を呈す。一方、都心からやや離れたところにある学校のほうが、地場の学力上位層を総取りしたうえで、沿線にある競合校を1つ1つターゲットにして差別化施策を講じることができるので、先手先手を取りやすい。

 神奈川においては聖光学院が、千葉においては渋谷幕張が、そういう地の利を背景に、躍進できたと考えられる。2026年度からの私立高校無償化で中学受験の裾野が広がれば、公立王国といわれる埼玉でも、同様に躍進する学校が現れる可能性がある。

(3)の生徒の価値観の画一性とは、要するに東大を志望する生徒の割合だ。後発進学校ほど東大を目指すようにと進路指導する傾向がある。東大の合格実績を伸ばせば全国区で学校の評判を得られて、経営が安定するからだ。

 いまでこそ「東大に行け」などという進路指導はしないことで有名な開成や灘や麻布であっても、都立高校の後塵を拝していた1960年代までは、東大への進学を強く意識していた。