明治時代、東大を頂点にして、全国津々浦々から優秀な子どもを吸い上げるシステムとして日本の学校制度は設計された。学校教育における最高の成功とは、東大にたどりつくことだった。それが日本人の教育観に深く根付いた。
だからいまでも毎年春には、高校別東大合格者数ランキングに注目が集まる。上位を東京の私立中高一貫校が占めているので、突出した学校が東京に集中しているように見えてしまう。
しかし実際の入試難易度を見ると、京大や国公立大学医学部も東大に肩を並べている。河合塾の2026年度入試予想偏差値一覧によれば、東大の偏差値は学部によって72.5~67.5、京大は70~62.5、国公立大学医学部医学科は72.5~62.5である。
東大、京大、医学部に合格した合計人数でランキングしてみると?
試しに、毎年全国の高校を調査して大学合格者数の網羅的なデータベースを構築している株式会社大学通信の協力を得て、東大・京大・国公立大学医学部医学科の合格者数を、2021~2025年の5年間の平均値でランキングにしてみた。東大合格者数ランキングの顔ぶれとはうって変わり、上位には西日本勢が並ぶ(表1)
※東京大+京都大+国公立大医学部医学科(東京大と京都大のダブりは除く)の2021年から2025年の合格者数の平均値でランキングした。合格者数は各高校への調査と一部大学の公表値を使用し、通信制や定時制を併設している高校の卒業生数は全日制のみの人数を使用。小数点第1位までが同じの場合は同順位とした。以下の表も同じ 大学通信調べ
この記事の目的は、東大合格者数で高校の良し悪しを語るようなことがいかにナンセンスかを示すことである。また、5年間の平均値をとったのは、高校別の合格実績には以下のような「ゆらぎ」があり、単年で見るとゆらぎの影響を受けやすいからだ。
まずは「隔年現象」。隔年で合格者数が増減する現象だ。現役生が多数合格した翌年は浪人生が少ないので現役・浪人を合わせた合格者数は減る。逆に現役合格者が少なかった翌年は現浪合計の合格者数は増える。
そして「7年周期の法則」と「4年周期の法則」。たとえば中高一貫校の場合、ある年の東大合格者数が多かった学校は、7年後の合格者数も多くなることが予測できるのだ。東大合格者数が増えると翌年の中学入試でその学校が人気になり、その子たちが6年後の東大入試で結果を出すからだ。3年間の高校単体の学校の場合、それが4年周期になる。