――市場調査をして、差別化を考えた?
佐賀崎 ええ、自分なりにですが。投稿サイトのランキングをチェックしたり、「どんな要素が読者に受けているのか」を見たりしていました。それで当時はまだ「おじさん主人公」はあまり見かけなかったので、「これは狙い目かもしれない」と。
――実際に“おじさん”を主人公に据えてみて、良かったことって何ですか?
佐賀崎 僕はもうすぐ40歳になるんですが、やっぱり自分と年齢が近いキャラクターのことは想像しやすいですよね。「おじさんってこういうこと考えるよな」という感覚が、自分の中から無理なく引っ張り出せるので。
――逆に難しかったこともありますか?
佐賀崎 どうやって戦うかが苦戦しましたね。若い天才のように派手な魔法や力技で押し切るわけにはいかないので、どうやって老練さを見せるかは毎回頭を使いました。「積み重ねてきた経験や技術」が滲み出てくるようなかっこよさを出せるのは、おじさんならではの魅力だと思います。
「『肉体的な成長』がすでに終わっているキャラクターなんですよね」
――「世界最強」では全然ないけど、しぶとくて厄介で機転が利く……という立ち位置が印象的です。
佐賀崎 おじさんなので、スピードやパワーでは若者に敵わない。常に無双できるわけでもない。でもだからこそ「その上でどう戦うのか」という点こそ、おじさん主人公の魅力を出すポイントだと思いますね。
勝つにしても、おじさんが勝つことに納得できる理由が必要だし、負ける時も「年齢による衰え」や「精神的な揺れ」の説得力がいるんです。
――「新しい必殺技」のような定番シーンもほとんどないですよね。
佐賀崎 ベリルは「肉体的な成長」がすでに終わっているキャラクターなんですよね。そのリアリティは大事にしたい。でもだからこそ、精神面や人生観が成長するポイントになります。若い頃は見えなかったものが見えるようになる年の功、のような。
――強さという意味では今がピークなのですか?
佐賀崎 自分の年齢や引き際を自覚できるのも年の功だと思うんですよね。死ぬまで戦うというタイプではなくて、「引退する日は必ず来るけれど、まだできることがある」という境地がかっこいいと僕は思うんです。

