反中:天恵が麻綾の周りをちょろちょろしているのもいいですよね。一緒に遅くまで残業したり。麻綾が落ち込んでいる時はごはんに誘ったり、「なんか可愛いやつだな」と思いながら読んでいました。

城戸川:実は天恵はもっとダークなキャラ設定にするつもりだったんですよ。実はそれっぽい伏線もいくつかあって、天恵の役割についてはとても悩みました。でも、さすがの麻綾でも相棒の天恵に裏切られたら挫けてしまうと思ったんですよね。結果的に天恵と麻綾の関係性が良かったという声をいただくことも多いのでこれで良かったと思います。

市川:僕も天恵のことは凄く好きなので悪いやつにならなくてよかったです。本当に個性豊かなキャラクターが多いですよね。

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『高宮麻綾の引継書』キャラ相関図

成生:僕は出目(でめ)社長も好きですね。普段のノリは軽いですが、ここぞというところで踏ん張ってくれそうなところが頼もしいですよね。きっと出目社長は部下にはなんでも好きなことをやらせるタイプですよね。

城戸川:出目社長は2代目でまだ何もできていない中で、専門的な業務は部下に丸投げするんですが、その代わり社長の役割として外からお金は引っ張ってくるんですよ。このキャラ造形には僕自身が営業時代にいろんな会社の社長さんにお会いしてきたことが影響しています。

麻綾と桑守の関係性は大きく加筆した

反中:同期の桑守もすごく人間臭いキャラですよね。これがリアルなビジネスマンだと思います。自分の仕事に対する評価とか結果って誰しもが求めるものじゃないですか。桑守も社内での評価を得ようとして、麻綾に嫌がらせをしてしまうんです。でもそれは、彼も仕事への野心が強いから。

 こういう人達がそれぞれ足を引っ張り合ったり、協力しあったりして会社は回っているんだなと思うと桑守が愛おしくなります。

城戸川:桑守は「自分は人生を上手く生きている」というように思いたいが、同期の麻綾が社内であまりにも輝いている。そんな麻綾の姿を見たら桑守はどう思うのか凄く考えました。

反中:麻綾と桑守は仲間じゃなくて、あくまで同期なんですよね。その関係性が素敵だなと思いました。

城戸川:実は麻綾と桑守の関係性は大きく加筆したんですよ。最初は麻綾と桑守の決着がつかないまま終わっていました。でもこのままだと物語として締まりがないと感じて、ある章を丸々書き足しました。同期ならではの関係性を描き切ったことでお仕事小説としての骨が一本通った気がします。

市川:桑守の活躍があるからこそ麻綾の魅力がより鮮明になりますよね。だから読者がより麻綾を好きになるし桑守も好きになるっていう作品の構造になってますよね。

城戸川:ありがとうございます。実は秋には続編も刊行予定です。ヒイヒイ言いながら書いてますが今作よりももっと面白くなるので楽しみにしていてください。

 
次の記事に続く 「書店員の仕事にはたまらない瞬間がある!!」本屋が減り続ける時代に働く書店員のホンネ